「ちつ」について正しく学ぼう。腟内フローラって何?

日本では、「性」に関する話題を恥ずかしいものととらえがち。でも女性が心身共に健やかに美しく生きていくために、ちつの知識を正しく身に着けることはとても大切なことです。

ちつは、外陰部と子宮をつなぐ器官で、生理やセックス、妊娠・出産に関わる重要な女性のコア(核)。健康な「ちつ」は、つやとハリがありいつも潤っています。これは、ちつの中に棲む善玉菌であるデーデルライン桿菌が活発に活動しているからです。腟内は常に酸性の状態にあり、外から侵入した雑菌やウイルスから守っているのです。これをちつの自浄作用といいます。健康な状態では自己免疫力が高く、ちつの自浄作用が機能しています。しかし、加齢による女性ホルモンの低下、不規則な生活やストレスなどでホルモンバランスが崩れると、善玉菌の活動が衰え、自浄作用も低下。したがって、雑菌やウイルスが侵入して炎症や感染症など起こりやすくなるのです。このように免疫力とちつの状態は常にリンクしています。

腟内フローラを整えると健康なちつに!

善玉菌、悪玉菌のイラスト

ヨーグルトなどでなじみのある腸内フローラ。腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌という多様な菌がお花畑(フローラ)のように生息していることからこのように呼ばれていますが、実は「ちつ」にも同じように腟内フローラが存在します。

腟内フローラの善玉菌の代表が、デーデルライン桿菌。デーデルライン桿菌が優勢な時は、腟内の自浄作用が活発で免疫力もアップ。でも、ホルモンバランスの乱れで、悪玉菌が増殖すると、自浄作用が低下して感染症などを起こしやすくなってしまいます。日和見菌で代表的なカビの一種である「カンジダ菌」は、悪玉菌優勢なときには悪玉菌と同じような働きをしてしまうため、「腟カンジダ症」を引き起こしてしまいます。ホルモンバランスの乱れやストレス、抗生物質の長期服用などで免疫力が落ちている度に、繰り返して感染してしまう女性も少なくありません。腟まわりの感染症は、必ずしも性交によって起こるとは限りません。免疫力が低下していると、まれに温泉やプールなどでも感染してしまうことだってあるんです。

腟内フローラを日頃から善玉菌優勢に整えておくことはとても大切。デーデルライン桿菌バランスを整えるちつの健康につながります。

おりものは、
女性のからだの健康バロメーター

体操座りして、陰部をハートで隠す女性

おりものの重要な役割は、自浄作用。ちつは肛門のすぐ近くにあり大腸菌などの雑菌が入りやすい構造になっています。目を守る涙のように、ちつを守るために分泌されるのがおりもの(帯下)なのです。大切な生殖器を雑菌やウイルスから守り、不要な老廃物を排出したり、おりものはちつの健康には欠かせない大切なものなのです。

健康なおりものは、無色透明で気になるにおいはほとんどありません。でも、おりものの色やにおい、形状がいつもと違うと感じたときは、腟内の自浄作用が低下して、腟炎を起こしている可能性も。例えば、腟カンジダ症、腟トリコモナス症、性器クラミジア感染症、淋菌感染症など。感染症は必ずしも性交によるものだけでなく、自浄作用の低下で起こることもあります。

また、外陰部の状態をチェックすることも重要。かゆみや赤み、痛み、しこりなどいつもと違う変化があったら、感染が起きている可能性も考えられます。日頃からおりものや外陰部の状態に関心を持つことは、「ちつ」の健康チェックにもつながります。「ちつ」周りの不快症状や違和感は、「恥ずかしい」という気持ちから誰にも相談できずについついやり過ごしてしまいがち。でも放っておいたり、自己判断で市販薬で対処してしまうことで、症状が悪化してしまうことも。病気によっては、深刻な病気に発展したり不妊の原因になったり、将来にわたって深刻な影響を及ぼすこともあるのです。

あなたのデリケートゾーンは大丈夫?チェックしてみよう!

手鏡を持つ女性

 外陰部にかゆみがある

 外陰部が赤くなったりただれたりする

 外陰部に水ぶくれやブツブツができている

 外陰部がヒリヒリする、または熱を持っている感じがする

 おりもののにおいが普段よりきつい

 おりものの色がいつもと違う(黄、茶、緑、灰色など)

 おりものが泡だったようになっている

 おりものが白くてカッテージチーズ、ヨーグルト状になっている

 一日に何度もショーツを替えるほどおりものの量が多い

一つでも当てはまるものがあれば、早めに婦人科をぜひ受診しましょう!

 

ちつは老化する?!女性ホルモン(エストロゲン)の変化と密接な関係

肌のたるみやしわが気になったり、髪が薄くなったりと、外見の老化は気になりますよね。でも、外見以上に意識してあげなければいけないのが「ちつの老化」

女性らしさをつくる女性ホルモンである「エストロゲン」は、35歳を過ぎると低下し、閉経前後には急激に減少します。

女性のライフステージと女性ホルモン

女性のライフステージと女性ホルモン

 

エストロゲンは、デーデルライン桿菌(善玉菌)の栄養源となるグリコーゲンを分泌して、みずみずしく弾力に富んだ腟をキープします。しかし、加齢によりエストロゲンが減少すると、皮膚や粘膜に十分な栄養がいきとどかなくなって、血流が悪くなります。そのため、ちつや外陰部にも潤いがなくなり乾燥して薄くぺらぺらになってくるのです。

みずみずしい新鮮なリンゴが時間の経過により、しぼんでしわしわになったり、フカフカのお座布団がずっと座っているとせんべい布団になるような感じです。

さらに、デーデルライン桿菌が減少すると、腟内が酸性からアルカリ性に傾いて、自浄作用が低下。雑菌が繁殖しやすくなり、様々なトラブルを起こしやすい環境になってしまうのです。

でも、これは加齢だけに限ったことではありません。若い人でもストレスや過度なダイエットなどで女性ホルモンのバランスが崩れると、ちつの老化が起こってしまうので要注意。

エストロゲンとちつの老化は、密接な関係があり、年齢を重ねても潤いのあるちつをキープしている人は、健康で見た目も若々しく美しい人が多いことがわかってきました。日頃からきちんと「ちつ」のケアをし、健康で若々しいちつをキープすることは「女性のQOLを高める究極のアンチエイジング」です。